セーラームーンとは、一体何者か。 原作「美少女戦士セーラームーン」で語られる前世の世界には、 実は「セーラームーン」という人物が登場しません。 月の王女「セレニティ」は「月野うさぎ」として現代の日本に蘇り、 月王国を滅ぼした悪の意思「メタリア」と戦います。転生後のセレニティの 戦士としての資質は群を抜いており、他の戦士には無い特殊な能力や 技を操り誰はばかる所無く戦士「セーラームーン」として群雄割拠します。 クインベリルを誅し、セーラーギャラクシアを誅し、遂には地球上に 自らの王国を築くまでに至ります。 しかし原作中、「セレニティ」という人物は自らの意思で戦う者では無く 「侵略戦争に巻き込まれ、薄倖の運命を辿り死に至った月の王女」という 限定的なイメージのみで語られ、転生後のエネルギー溢れる 「セーラームーン」のイメージとはかけ離れています。 しかし、セレニティと同一人物であることは疑いようもありません。 一体どういう事なのでしょう。とにかくこうなってくると、王女「セレニティ」に 関する考察がちょっと変わってきます。 おそらくセレニティは、王女でありながら国交や行政に深く関わっていた 人物だと思われます。その特殊な能力と王の権力を用い月軍を動かす「将」 であり、戦乱に及ぶほどの緊張の中悠々と敵国と通じる「執政者」だった のではないでしょうか。軍議や戦闘に参加していた彼女が戯れに兵装し、 セーラームーンなる者を名乗っていたのかも知れません。 原作での「悲劇の王女」的なイメージとは大きくかけ離れますが、そう捉えれば 王女が戦士の技や力を持っていたり、敵国の人間と関係を持っていた事に 関してもつじつまが合ってくるように思えるのです。 大体平和な2国間にそんなに突然戦争が始まるとも思えないし、そもそも 戦争に「どちらかが悪い」なんていう概念はありません。メタリアなんてものが 本当にあったのかもちょっと怪しいです。 「sailor-moon THE WAR」は、そういった観点から紡がれた物語であり、 闇に葬られた「月の暗面」の一幕を回帰したものです。 2つの文化を消し去った文字通りの最終戦争。 そこに影をおとす巨大な「王」の存在。 「セーラームーンとは、一体何者か」 そんな疑問を抱きつつ、漫画をお読み頂ければ幸いです。 |